団こと葉演出作 “A Watch” 報告レポート
団 こと葉
9月23日、ニューヨーク・マンハッタンのど真ん中、チェルシーにあるハドソン・ギルド・シアターにて、団こと葉演出作「A Watch 」が無事に千秋楽を迎えました!
この作品は、それぞれ期は違うものの同じ母校・HBスタジオで出会った、演出家兼アクティングコーチの私、韓国人脚本家で女優のユーリン・ナム、カナダ系アメリカ人の女優ヘレン・カシャップによる3人プロジェクトで、今回はニューヨークシアターフェスティバルに選抜されての上演でした。
(公演のチラシ表面)
同演劇祭は世界的にも5本の指に入るほど有名で、米国内ではもちろん最大規模。いわば才能ある若手クリエイターの登竜門的な位置付けです。
合計3回の私たちの公演は、なんと連日満席で、補助席が出るほどの盛況ぶり。演劇祭主催者からも驚きの声があがっていました。私達の他に4つの短編芝居が同じ日程で上演されていたのですが、組み合わせにも恵まれたのだと思います。
初日である9月20日は、この演劇祭のスケジュール上、午後に初の舞台稽古をして、そのままその夜開幕というタイトなスケジュール。当日は、いかに技術的な不安点を潰し、本番の舞台上で俳優たちに自由を感じてもらえるかに重きを置きました。
実は今回テクニカルオペレーターを頼む余裕がなく、照明と音響も私が務めたので、そちらもゼロから勉強しました。(まだ1ぐらいですが。笑)
初日はなんとも言えない緊張と高揚感が入り混じる中、お客様が入ってのはじめての化学反応。狙っていたところでしっかり笑いや反応が起こると、どうしたって顔がニヤけました。やったー。
終演後にごくシンプルなノート(ダメ出し)を伝えて、初日に駆けつけてくれた仲間とともにささやかなパーティ。
キャパ100席規模の決して大きくはない劇場ですが、この3人でゼロから完全新作を作り上げて今日までこられたこと、3人でぶつかることを避けずに本気で稽古できたこと、なにより私を演出家でいさせてくれたことに、改めて感謝が込み上げました。
(本番1週間前。作品の舞台となっている実在するブルックリンの公園にて、リサーチ兼屋外リハーサル。)
続く2日目は、劇場のトラブルで裏はバタバタ、20分遅れの開演。
俳優2人は、このトラブルの中で心を乱されないようにしようとした結果、少しシリアスになり、ストーリーが平坦な印象になってしまいました。集中してなかったわけじゃないんですが、その中でオープンでいる、バランスって難しいですね。本人達からも「入り込みすぎて芝居がひいてしまった」「思ったところで客席から反応がなかったので焦ってしまった」との感想。
半年前にLa MaMaシアターで私が俳優としてオフブロードウェイデビューした時の演出家・ジョンも言っていましたが、「2日落ち」って世界共通というか、やっぱり2日目は難しい!
でも舞台はナマモノ。2日目のお客様には、「派手さはないけど、若者たちの等身大のリアリティが良かった」とのお声を頂けました。波はあっても稽古は裏切りません。また尊敬する演出家、母校HBスタジオの講師陣、ペリーダンススタジオのバレエの先生など、日頃お世話になっている目上の方のご来場も多くて、有り難かったです。
そして一日休演を挟んでの千秋楽。実は私は日本での仕事のため、この日はもう現地にいられませんでした。
前日未明に空港から遠隔で、2日目のノートを再確認、またそれをうけて千秋楽のウォームアップ中に「ウタハーゲンテクニックの6つの質問」を確認することを頼みました。
現地オペレーターは、急遽ステージマネージャーを引き受けてくれたHBスタジオの日本人俳優仲間・うららちゃん。
ドキドキしながら報告を待っていると、終演すぐに彼女から、「千秋楽、2人とも素晴らしい舞台を作っていて、お客様の反応も非常に良かったです!」との連絡が。見に来てくれた業界仲間からも「美しい脚本、良い演出、俳優にも嘘がない。」「5作品の中で1番客席が沸いていた。」など有難いメールが続々。
本人たちも3公演の中で一番手応えがあったようでした!
今回のニューヨークシアターフェスティバルへの参加は、非常に得るものが大きかったです。
ニューヨークへ来てからすぐに、とあるダンスミュージカルの振付兼演出をやらせて貰う事がありましたが、その時は自分の作品という感じはまだ薄かった。それよりもプロデューサーのもの、という感じだったんですね。
その後本格的にHBスタジオでも演出のコースを取りはじめ、日本でもNYでもアクティングコーチとしていろんなタイプの俳優さんとワークショップをし、オペラやストレートプレイで演出助手しながら現場を学び、また小さな規模で4つの自身演出作をスタジオ披露してきて、そしてついに、やっとスタート地点に立てた、そんな感じでした。
(All outside rehearsal photos by Fernando Camacho & Mao Hanada)
実は、冬のニューヨークシアターフェスティバルへのお声がかかっているので、もしかしたら今度は私の「脚本・演出」作が、ニューヨークでお目見えするかもしれません!